伊豆諸島の冬の船|欠航は何日続くか。運航記録を数えたら、冬の欠航のほぼ半分が3日以上だった

曇り空の下、黒い砂浜と護岸のむこうで白波が砕ける八丈島の海岸

伊豆諸島の冬は、船が止まる。それは多くの人が知っている。けれど旅の日程を組むときに本当に必要なのは、「止まるかどうか」ではなく「止まったら何日続くのか」のほうだ。1日待てば動くのか、3日は覚悟するのか。それによって、取る休暇の長さも、宿の予約の仕方も変わる。

そこで、御蔵島観光協会が公開している東海汽船の運航記録(2013年1月1日〜2026年9月18日の日次の○×)をすべて拾い、欠航が何日続いて終わったかを1本ずつ数えた。冬に始まった連続欠航は300本あり、その48.0%が3日以上続いていた。夏は26.6%なので、冬はほぼ倍である。この記事は、その実数から冬の日程を逆算するためのものだ。

冬の欠航は「1日待てば動く」が通じない

まず、欠航の終わり方から見る。御蔵島の記録で、船が着かなかった日が何日続いたかを1本の「連続欠航」として数え、始まった月の季節ごとに分けたのが次の表だ。期間中に完結した連続欠航は全部で797本あった。

続いた
日数
冬
12〜3月
夏
6〜9月
春秋
4,5,10,11月
1日で終了 27.3% 51.3% 53.0%
2日まで 52.0% 73.4% 76.2%
3日まで 66.7% 84.9% 89.6%
5日まで 82.7% 95.0% 97.0%
7日まで 91.3% 97.5% 99.7%
本数 300本 199本 298本
平均 3.4日 2.2日 1.9日
御蔵島観光協会「東海汽船運航状況」の日次記録(2013年1月1日〜2026年9月18日、4,953日ぶん)から筆者が集計。「連続欠航」は御蔵島に船が着かなかった日が途切れず続いた区間で、始まった日の月で季節に分けた

差がはっきり出るのは、いちばん上の行だ。夏と春秋は、欠航の半分がその日1日で終わる。翌日には船が来る。ところが冬は1日で終わるのが27.3%しかない。およそ4回に3回は、翌日も船が来ない。

そして冬は長い側にも裾が伸びる。6日以上続いた連続欠航は冬に52本(17.3%)あり、春秋は9本(3.0%)しかない。15日以上に至っては記録全体で4本、いずれも冬だった。長い順に21日(2025年1月26日〜2月15日)、18日(2024年1月1日〜1月18日)、15日(2024年2月26日〜3月11日)、15日(2024年12月22日〜2025年1月5日)である。

つまり冬の欠航は、性質からして夏のそれとは別物だ。夏の欠航は台風という「通り過ぎるもの」が主役で、通過すれば数字が戻る。冬は、うねりが居座っているうちに次の季節風が来るため、欠航が長引く。「1日待てば動く」という夏の感覚のまま冬の日程を組むと、足りなくなる。

いちばん着けないのは1月、いちばん長く止まるのは12月

月ごとに見ると、どの月がどう厳しいのかが分かれる。2013年から2025年までの13年ぶんで、御蔵島に船が着いた日の割合と、3日以上の連続欠航が始まった本数を並べた。

月 着いた日
の割合
出られた日
の割合
3日以上の
欠航(年平均)
12月 37.4% 38.5% 3.3本
1月 26.6% 35.8% 2.7本
2月 34.5% 38.4% 2.5本
3月 48.8% 53.5% 2.0本
4月 63.5% 70.4% 0.9本
5月 76.9% 80.2% 0.8本
6〜9月 71.7〜78.6% 74.0〜79.8% 0.6〜1.4本
10月 58.8% 62.3% 1.9本
11月 59.4% 62.5% 1.5本
同じ記録を月別に集計(2013〜2025年の13年・4,692日ぶん)。この13年の通年では着いた日が59.3%(御蔵島へのアクセスの記事は2026年9月までを含む4,946日で59.1%。月別の着岸率は両記事で同じ)

着ける確率がいちばん低いのは1月の26.6%で、4日に1日しか着かない。ところが3日以上の長い欠航が最も多く始まるのは12月(年平均3.3本)だ。1月は「そもそも着ける日が少ない」月、12月は「一度止まると長い」月、という違いがある。年末年始に島へ行く計画は、この両方に挟まれていることになる。

もうひとつ、表を横に見ると気づくことがある。1月は「着いた日」26.6%に対して「出られた日」は35.8%と、9ポイントほど高い。橘丸は朝6時ごろに御蔵島へ着き、八丈島で折り返して昼12時半ごろにまた寄る(東海汽船の時刻表より)。同じ日でも時間帯が違えば海の状態も違う、ということが数字にそのまま出ている。島に入るほうが、出るより難しい月がある。

夕暮れの御蔵島港。外洋へ突き出した突堤が1本だけ伸びている
御蔵島の港。外洋に突き出した突堤が1本あるだけで、うねりを避ける場所がない。観光協会も「桟橋が1箇所しかないため、海況によっては客船が欠航することが、ままあります」と書いている

2泊3日で行ったら、予定の日に帰れたのは10回に4回

ここまでは船の側の数字だ。旅行者の側に置き換えるとどうなるか。記録を使って、冬に船で御蔵島へ渡れた日を起点に、2泊して3日目に出るつもりだった人が、その日に出られたかを数えてみた。対象は557日ぶんある。

帰りは
どうなったか
件数 割合 累計
予定どおり出られた 224 40.2% 40.2%
1日遅れ 126 22.6% 62.8%
2日遅れ 77 13.8% 76.7%
3日遅れ 47 8.4% 85.1%
4日遅れ 32 5.7% 90.8%
5日遅れ 19 3.4% 94.3%
6日以上 32 5.7% 100%
2013〜2025年の12〜3月のうち、御蔵島に船が着いた日(557日)を起点に、その2日後に船が出たかを数えた。船だけで帰る前提の計算で、ヘリコプターに乗り換えた場合は含まない。同じ数え方の夏(6〜9月)は、予定どおり出られた日が79.9%

冬に予定の日に帰れたのは40.2%。夏の79.9%のほぼ半分だ。ここから予備日を逆算できる。

  • 予備日0日(帰った翌日から仕事)……40.2%しか成立しない
  • 予備日1日……62.8%
  • 予備日2日……76.7%
  • 予備日3日……85.1%

冬の伊豆諸島に「絶対に帰れる日程」は作れない。予備日を3日取っても15%は外れる。数字が言っているのはむしろ逆で、予備日1日は気休めに近く、2日取って初めて4分の3になるということだ。帰着の翌日に外せない予定がある旅程なら、冬は船を主たる交通手段にしないほうがいい。

なぜ冬は直前まで読めないのか

台風の欠航と冬の欠航で決定的に違うのは、先が見えるかどうかだ。

台風には予報円がある。気象庁は台風情報を5日先(120時間先)まで6時間ごとに出している(気象庁「台風情報の種類と表現方法」)。だから台風の年は、数日前に「この日は危ない」と当たりがつけられる。実際、10月の台風では接近の前日にはもう船が止まる例が多かった(伊豆諸島の台風シーズンで39回ぶんを集計している)。

冬の高波には、それに相当するものがない。うねりの予測として一般に見られるのは気象庁の沿岸波浪実況・予想図で、これは1日4回(4時30分・10時30分・16時30分・22時30分ごろ)更新され、72時間先までを3時間ごとに表示する。台風の5日先に対して、冬は3日先までしか絵がない。

そのうえ、欠航の基準そのものが公表されていない。東海汽船は「風や波が何mだと欠航するの?」という問いに「港内状況や海上状況などを総合的に判断して最終決定しております」と答えている。利島村も、来島Q&Aで「船舶会社で基準を設けていますが、海の状況は、たった10分でも変わってしまうこともあり、タイミング悪く欠航になることもまれにあります。晴天でも海の状況が良いとは限りません」と書く。数値で線を引けるものではない、ということだ。

決まる時刻を知っておく

読めない以上、決まる時刻を押さえておくしかない。

便 いつ決まるか
大型客船
(さるびあ丸・橘丸)
当日09:00以降に更新、最終決定は17:00ごろ
高速ジェット船 当日06:00ごろ決定
連絡船くろしお丸
(八丈島〜青ヶ島)
当日の朝7時に決定
東京愛らんどシャトル
(ヘリコプター)
各便の出発1時間前に天候調査を行い最終決定
東海汽船「運航状況」、青ヶ島村「アクセス」、東邦航空「東京愛らんどシャトル」の各公式ページより。高速ジェット船には就欠航専用の自動音声案内(03-3433-2101/受付6:00〜8:00)がある

夜行の大型客船は前夜のうちに竹芝を出るので、乗る前に「着けるか」は分からない。東海汽船は運航状況に「★」がついた便について、「出航しても、海上・港内の状況により港に着けず、次の島まで運航するか、出航地に引き返すことがございます」と案内している。その場合は「欠航」扱いになり、他の島で下船せず同じ船で戻れば出港地で全額返金される。この「★」の読み方と手続きは、冬にこそ効いてくる。

冬の重さは島によって違う

ここまでの数字はすべて御蔵島のものだ。御蔵島は伊豆諸島でもっとも船が着きにくい島で、そのまま9島に当てはめると厳しすぎる。島ごとの冬の事情を、公式が書いている範囲で並べる。

島 船が止まった
ときの代替
冬の事情(公式の記述)
大島・新島
神津島
調布からの
飛行機
ジェット船・大型客船・空路の3本立て。代替がいちばん組みやすい
三宅島 調布からの
飛行機
船は夜行の大型客船。空路が残る
八丈島 羽田からの
飛行機
伊豆諸島でもっとも代替が厚い島
式根島 なし
(空港なし)
竹芝からのジェット船・大型客船はあるが、空港もヘリ路線もなく代替が船だけ
利島 ヘリ
(大島から)
村が「1〜2月は時期的に欠航率が高いので、必ずヘリの予約をしてお越しください」と明記。利島航路の高速船は「季節により変動。冬季は運休有」
御蔵島 ヘリ
(定員9名)
桟橋が1箇所のみ。1月の着岸率26.6%
青ヶ島 ヘリ
(八丈島から)
連絡船の就航率は年間を通して50〜60%。運航決定は当日朝7時
利島村「来島Q&A」、御蔵島観光協会「島へのアクセス」「FAQ」、青ヶ島村「アクセス」、新中央航空・ANA の各公式より。着岸率は前掲の集計。調布飛行場からの定期便があるのは大島・新島・神津島・三宅島の4島

ここで効いてくるのが飛行機があるかどうかだ。大島・新島・神津島・三宅島・八丈島には空路があり、船が止まっても別の乗り物が残る。一方、利島・御蔵島・青ヶ島に空港はなく、逃げ道は9席のヘリか、待つことしかない。式根島にはその空港もヘリ路線もない(東京愛らんどシャトルが結ぶのは大島・利島・三宅島・御蔵島・八丈島・青ヶ島)ので、船が止まったら船が動くまで待つことになる。どの島にするかを選ぶ段階で、冬ならこの線引きを先に引いたほうがいい。

海から見た青ヶ島の三宝港と断崖
青ヶ島の三宝港。断崖に貼りつくようにあり、連絡船の就航率は年間を通して50〜60%と村が案内している

冬の日程の組み方

予備日は2日、休暇は帰着日の翌々日まで空ける

前掲のとおり、予備日1日では62.8%、2日で76.7%だ。冬は2日を基準にしたい。ここでいう予備日は「帰れなかったときに島でもう1泊できる日」のことで、帰着日の翌日に予定を入れないだけでは足りない。翌々日まで空けて初めて予備日2日になる。

ヘリは「予備」で押さえられる。ただし9席しかない

船が止まったときの逃げ道は、東京愛らんどシャトル(東邦航空のヘリコプター)だ。御蔵島観光協会は「天候など出船で帰られなくなったら、他に方法がありますか?」という問いに、ヘリコプターがあるとしたうえで、「定員9名と少ないため、事前の予約がないと」なかなか乗れないと答えている。欠航してから探しても間に合わない、ということだ。

実際に、帰りのヘリを予約したうえで御蔵島へ渡り、船に乗れたのでヘリをキャンセルした旅行者の記録がある(2021年11月の個人の旅行動画)。その人は最後に、空席が少ない時期は本当に必要な人が乗れなくなるので配慮してほしいと付け加えていた。予備としての予約は有効な手だが、9席を島の人と分け合っているという前提は忘れないほうがいい。取らないと決めたら早めに空ける、が最低限の作法になる。

延泊した分の宿代は自己負担になる

欠航したとき、船の乗船券のほうは守られる。東海汽船は「ご予約した便が欠航した場合、無手数料でご予約のお取消し・ご変更を承ります」としている。ただし条件があり、運航の決定前に自分で取り消すと所定の手数料が発生する。荒れそうだからと前夜に自己判断でキャンセルすると手数料がかかる、ということだ。決定を待つのが基本になる。

一方で、「欠航により現地ご宿泊になった場合の宿泊費はお客様のご負担となります」とも明記されている。冬の旅の予算には、延泊2日ぶんの宿と食事を最初から見込んでおきたい。手続きの細かいところは船が欠航したときの手続きの記事にまとめてある。

宿と島へ、先に「冬に行く」と伝えておく

島の宿は欠航に慣れている。延泊や当日キャンセルの扱いは宿ごとに違うので、予約の段階で聞いておくと当日の判断が速い。青ヶ島のように宿の数がごく限られる島では、延泊できるかどうかが先に分かっているだけで日程の作り方が変わる。

それでも冬に行く理由はある

ここまで数字で脅すように書いてきたが、冬の伊豆諸島には冬にしかないものがある。椿だ。利島村は来島Q&Aのおすすめの時期として、「1〜2月は、島の至るところで咲き誇る椿を見ることができます」と書いている。そのすぐ後ろに「時期的に欠航率が高いので、必ずヘリの予約をしてお越しください」と続くのが、冬の伊豆諸島そのものだ。

赤い椿の花が枝いっぱいに咲いている
椿は冬から早春にかけて咲く。利島は島の8割が椿林で、1〜2月がその盛りにあたる

同じ来島Q&Aは「6〜9月末までは、比較的海も安定していることが多いです(台風を除く)」とも書いている。椿がいちばんきれいな時期と、船がいちばん来ない時期が重なっている。これは避けようがない。だから冬に行くなら、日程を厚くする以外の解法はない。逆に、日程を厚くできるなら冬は人が少なく、宿も取りやすい季節でもある。

まとめ

  • 御蔵島の運航記録(2013年1月1日〜2026年9月18日)では、冬に始まった連続欠航の48.0%が3日以上続いた。夏は26.6%。冬は「1日待てば動く」が通じない
  • 2013〜2025年の13年で見ると、着ける確率がいちばん低いのは1月(26.6%)、長い欠航がいちばん多く始まるのは12月(3日以上が年平均3.3本)
  • 同じ13年で、冬に2泊3日で渡った場合に予定の日に帰れたのは40.2%。予備日1日で62.8%、2日で76.7%、3日で85.1%
  • 台風は5日先まで予報が出るが、冬のうねりは波浪予想図で72時間先まで。欠航の基準も公表されておらず、直前まで読めない
  • 島によって重さが違う。空路がある島(大島・新島・神津島・三宅島・八丈島)と、船とヘリしかない島(利島・御蔵島・青ヶ島)、船だけの式根島を分けて考える
  • ヘリは予備で押さえられるが定員9名。延泊の宿代は自己負担。運航決定前に自分でキャンセルすると手数料がかかる

冬の伊豆諸島は、日程に余白を持てる人のための島だ。余白が作れないなら、春から秋に取っておいたほうがいい。

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参考・出典(公式サイト)

※ 情報は変更される場合があります。おでかけ前に各公式サイトでご確認ください。(最終確認:2026年9月)

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