御蔵島へのアクセス|運航記録4,946日を数えたら、船が着いた日は59.1%だった

夕暮れの御蔵島港。外洋へ突き出した突堤が1本だけ伸びている

東京の南約200km、三宅島の南18kmに浮かぶ御蔵島。竹芝から大型客船「橘丸」が毎日1往復していて、時刻表のうえでは朝6時に着きます。それでも「行けるかどうか」は当日の海しだいです。御蔵島観光協会は2013年から、その日の客船が御蔵島に着けたか(着)/御蔵島から出られたか(発)を毎日○×で公開しています。この記録を数えてみると、船が着いた日は10年以上ずっと6割弱でした。この記事では、その集計結果と、港の構造という理由、そして「行けて、帰れる」日程の組み方をまとめます。

御蔵島に船が着いた日は、59.1%だった

御蔵島観光協会の「東海汽船運航状況」は、2013年1月1日から日々更新されている公開記録です。ここから2026年9月11日までの4,946日分(同じ日付の重複を除いた日数。記録のない日が56日あります)を本サイトで集計しました。

4,946日を数えた結果

項目 日数 割合
船が御蔵島に着けた日(着○) 2,923日 59.1%
船が御蔵島から出られた日(発○) 3,092日 62.5%
着も発も○だった日 2,625日 53.1%
着けたのに出られなかった日(着○・発×) 298日 着○の10.2%
集計期間 2013年1月1日〜2026年9月11日(4,946日)。出典=御蔵島観光協会「東海汽船運航状況」を本サイトで集計

島に着ける日はおよそ5日に3日。裏を返せば、ふつうに予定を立てると5日に2日は着かないということです。年ごとに見ても2013年が57.9%、2020年が56.8%、2024年が50.8%、2025年が55.9%と、大きくは変わっていません。設備が古いから悪い、という類の話ではなく、島の位置と港の形からくる常態だと考えたほうが計画は立てやすくなります。

着けた日の10日に1日は、その日のうちに出られない

見落としやすいのが着○・発×の日です。朝の下り便は着岸できたのに、昼の上り便は着けなかった、という日が集計期間中に298日ありました。全4,946日に対しては6.0%ですが、着けた日2,923日に限れば10.2%=およそ10日に1日です。御蔵島の旅程では、「行けない」ことより「行けたけれど帰れない」ことのほうが痛手になります。観光協会もFAQで「原則として、悪天候で船が欠航した場合は帰られなくなる事も考えて、日にちに余裕をもってご計画ください」と書いています。

いちばん長い連続欠航は21日間

記録のなかで船が連続して着けなかった最長は21日間(2025年1月26日〜2月15日)、次が18日間(2024年1月1日〜1月18日)でした。いずれも冬です。冬の御蔵島は、数日待てば船が来る、という感覚が通じない時期があります。

月別に見ると|5〜9月は7〜8割、1〜2月は3割前後

同じ記録を月ごとに集計すると、季節の差がはっきり出ます。下の表は年をまたいで安定した傾向を見るため、2013〜2025年の13年分を月別にまとめたものです。

月 着けた日の割合 出られた日の割合 集計日数
1月 26.6% 35.8% 391日
2月 34.5% 38.4% 359日
3月 48.8% 53.5% 400日
4月 63.5% 70.4% 389日
5月 76.9% 80.2% 399日
6月 78.6% 78.6% 388日
7月 75.1% 79.8% 401日
8月 77.7% 78.7% 399日
9月 71.7% 74.0% 389日
10月 58.8% 62.3% 403日
11月 59.4% 62.5% 384日
12月 37.4% 38.5% 390日
2013〜2025年の13年分を月別に集計。出典=御蔵島観光協会「東海汽船運航状況」を本サイトで集計。過去の実績であり、その年の運航を約束するものではありません

読み方はシンプルです。5月から9月は71.7〜78.6%、1月と2月は26.6〜34.5%。夏は4日に3日ほど着いていて、真冬は3日に1日前後ということになります。ミナミハンドウイルカと泳ぐドルフィンスイムのシーズンは、おおむね3月中旬から11月中旬です。ただしシーズン全体が着きやすいわけではなく、入口の3月は48.8%で年間平均(59.1%)を下回り、終わりの11月も59.4%と平均並み。安定しているのは5〜9月だけだと考えたほうが安全です。冬に御蔵島だけを目的地にした旅程は、着かない前提の予備日がないと成立しにくくなります。

もっとも、島に通う人の体感はもう少し厳しめです。御蔵島のドルフィンスイムを紹介する動画では、着岸率の低さに触れたうえで、夏場で6割ほど、夏が終わると5割を下回ると言われている、賭けのようなものだ、と語られています(出典:御蔵島のドルフィンスイム ポイント紹介(YouTube))。13年分の記録では5〜9月の着岸率は71.7〜78.6%なので、体感のほうが2割ほど低く出ている計算です。個人の旅行は年に数えるほどで、しかも連休や特定の季節に偏りますし、着けた日より着けなかった日のほうが記憶に残ります。ずれが出るのは自然なことです。押さえておきたいのは、島に通う人ほど「着かない日がある」を前提に予定を組んでいるという点で、13年分の数字はその感覚を裏づける側にあります。船が出ない日を「事故」ではなく「よくあること」として日程に織り込むのが、御蔵島の歩き方です。

なぜ着かないのか|突堤が1本しかない港

理由は天気の運ではなく、港の形です。御蔵島観光協会は島の基本情報で「外洋に位置するため、潮流と風の影響を受けやすくなっています。くわえて桟橋が1箇所しかないため、海況によっては客船が欠航することが、ままあります」と説明しています。島は断崖に囲まれ、風を避けられる入り江がありません。

なお、観光協会がいう「桟橋」は、東京都の資料では「突堤」(港から海へ突き出した構造物)とその「岸壁」(船が横づけする面)と呼ばれています。呼び方は違っても、指しているのは同じ場所です。この記事でも以下は都の資料にならって「突堤」「岸壁」と書きますが、船が着ける場所が実質1か所しかないという事実はどちらの表記でも変わりません。

30年以上続く整備事業が、いま2本目の突堤にかかっている

東京都港湾局が2024年11月の事業評価委員会に出した資料には、この構造がはっきり書かれています。伊豆諸島では通常、1つの島に2か所の港を整備して風向きに応じて使い分けるのですが、それが難しい小さな島では1つの港に2本の突堤を整備して港内の静けさを確保する(1港2突堤方式)方針が取られており、御蔵島港はこの1港2突堤方式にあたります。資料では、来島者の約7割が船を使うこと、定期貨客船の大型化で既存の岸壁では長さが足りないこと、岸壁の上を波が越えてしまい乗り降りや荷役の安全性が十分でないことも挙げられています。

その2本目の整備は、平成6年度に着手し、事業期間は令和17年度まで、事業費は222.9億円。令和6年度末の時点で進捗率は59.7%で、東側の岸壁(-7.5m)は150mのうち60mが整備済みという段階です。つまり、いま御蔵島に行こうとしている旅行者が向き合っているのは、まだ完成していない港です。都の資料は、この事業について「継続」が妥当だとしています。

御蔵島への行き方は2つ|橘丸とヘリコプター

御蔵島に入る手段は、東海汽船の大型客船「橘丸」と、東邦航空のヘリコプター「東京愛らんどシャトル」の2つだけです。ジェット船も飛行機も就航していません。

大型客船「橘丸」|毎日1往復・東京22:30発

夜の竹芝客船ターミナルの入口看板
伊豆諸島行きの玄関口、竹芝客船ターミナル。御蔵島行きの橘丸は夜22時30分にここを出る

橘丸の運航区間は「東京→三宅島→御蔵島→八丈島」と「八丈島→御蔵島→三宅島→東京」。毎日運航で、竹芝を夜に出て翌朝に御蔵島へ着きます。注目したいのは御蔵島の停泊時間が5分しかないことです。

便 東京(竹芝) 三宅島 御蔵島 八丈島
下り(3400便・毎日) 22:30発 翌5:00着/5:10発 6:00着/6:05発 8:55着
上り(2400便・毎日) 19:50着 13:35着/13:45発 12:35着/12:40発 9:40発
上りは八丈島→御蔵島→三宅島→東京の順に進みます(表は港の並び順で記載)。目安であり海況により変動します。出典=東海汽船「時刻表」

この時刻から、御蔵島での滞在時間は自動的に決まります。朝6時に降りて翌日の12時40分に出れば、島にいられるのは約30時間40分。1泊2日でも、丸1日を島で使えるのは実質1日だけです。運賃は次のとおりで、いずれも大人片道・消費税と燃料油価格変動調整金を含む金額です。

区間 2等 特2等 1等 特1等 特等
東京〜御蔵島 10,860円 16,300円 21,720円 26,060円 30,400円
三宅島〜御蔵島 2,540円 3,820円 5,090円 6,100円 7,120円
御蔵島〜八丈島 2,990円 4,480円 5,990円 7,180円 8,370円
大人片道の目安(2026年9月時点)。出典=東海汽船「運賃表」

東京愛らんどシャトル|9席のヘリコプター

もうひとつが東邦航空のヘリコミューター「東京愛らんどシャトル」です。毎日運航で、八丈島空港を拠点に青ヶ島―八丈島―御蔵島―三宅島―大島―利島を1日1往復で結んでいます(本土と島を直接結ぶ路線ではなく、島どうしをつなぐ路線です)。御蔵島発着は1日2便ずつ。観光協会のFAQは、定員が9名と少ないため事前の予約がないとなかなか乗れない、と案内しています。

便名 区間・発着時刻 片道運賃(大人) 小児(3〜11歳)
21便 八丈島10:50発 → 御蔵島11:15着 12,820円 8,980円
31便 御蔵島11:20発 → 三宅島11:30着 5,870円 4,110円
32便 三宅島14:35発 → 御蔵島14:45着 5,870円 4,110円
22便 御蔵島14:50発 → 八丈島15:15着 12,820円 8,980円
目安。出典=東邦航空 東京愛らんどシャトル「路線・時刻表」「運賃・料金」

予約は搭乗日1か月前の同一日から前日まで(日曜を除く)、予約センター(04996-2-5222/9:00〜16:00・日曜休業)で受け付けています。搭乗手続きは各便出発の50分前から30分前まで。手荷物は5kgを超えると1kgごとに超過料金がかかり、御蔵島〜三宅島は1kgあたり120円、八丈島〜御蔵島は260円です。三宅島や八丈島までは飛行機で入り、そこからヘリで御蔵島へ渡る、という組み方もできます。

日帰りはできない|上陸の前に宿を取る

御蔵島には、ほかの島にはないルールがあります。観光協会は基本情報のなかで「宿の収容数に限りがあり航路の安定しない島のため、日帰りは出来ません」と明記しています。加えて「島の宿泊施設は少なく飛び込みのお客様をお泊めできる余裕がありません、まず宿泊場所の予約をお願いします」「島内でのキャンプ(テント泊)は禁止です。バンガローをご利用下さい」とあります。宿を押さえることが、旅の最初の手続きだと考えてください。

御蔵島の海を泳ぐミナミハンドウイルカの親子
御蔵島の近海に暮らすミナミハンドウイルカ。イルカ船の申し込みは宿を通して行う

イルカ船は宿を通して申し込む

ドルフィンスイムの船も個別に予約するのではありません。観光協会は「宿泊予約の際に、宿へ『イルカウォッチング』もお申し込み下さい」と案内しています。宿とイルカ船がひと続きになっているので、宿が取れるかどうかがそのまま旅の成否になります。港から集落(里)までは徒歩10分ほどの上り坂ですが、民宿に泊まる場合は宿かイルカ船のスタッフが港まで迎えに来てくれます。

島に着いてからのルールと持ち物

島内では自転車の利用が禁止されていて、持ち込んでも乗れません。里は生活の場なので、水着やウェットスーツのまま歩くのも控えるよう案内されています。支払いは現金が基本です。観光協会によるとクレジットカードが使える民宿・商店はほとんどなく(ふくまる商店は2015年から利用可)、郵便局のATMについては協会が使えると案内していますが、あわせて現地で確かめてほしい旨の注記も添えています。現金は本土で用意しておくのが確実です。商店は2軒と農漁協の購買が1軒。人口はおよそ300人で、暮らしは里にまとまっており、協会のFAQによれば里中は隅々まで歩いても15分程度です。

「行けて、帰れる」日程の組み方

ここまでの数字とルールを、実際の予定表に落とすと次のようになります。

1. 帰りの後ろに予備日を1日足す

着けた日のうち10回に1回は出られない、という実績を踏まえると、帰京の翌日を空けておくのが最初の備えです。特に仕事に直結する予定を帰着日の当日や翌朝に入れないこと。冬は連続21日間着けなかった年もあるので、予備日1日では足りない季節があることも頭に置いておきます。

2. 季節を選べるなら5〜9月に寄せる

月別の実績では5〜9月が71.7〜78.6%、1月・2月が26.6〜34.5%でした。イルカのシーズンのなかでも安定しているのはこの5〜9月です。初めて御蔵島を訪ねるなら、ここに寄せるほうが旅程が壊れる確率を下げられます。

3. ヘリを「保険」にするときの注意

船が出ない日の逃げ道はヘリコプターですが、観光協会のFAQにあるとおり定員は9名で、事前予約が必要です。島へ入りたい人と島から出たい人が、この9席を分け合っています。船が動くかどうか読めないときに予備でヘリを押さえるのは現実的な備えですが、船に乗れると決まった時点ですぐ取り消すのが筋です。1席の空きが、本当にその便でなければならない人の移動を決めてしまう規模だからです。

4. 船のキャンセル規定を知っておく

東海汽船のキャンセル規定では、大型客船の2等乗船券は29日前から出港時刻まで手数料500円、出港後は100%です。2等以外の乗船券とルームチャージは、29日前〜7日前が500円、前々日までが10%または500円の高い方、出港時刻までが30%または500円の高い方で、こちらも出港後は100%です。予定が読みにくい島なので、等級を決めるときはこの差も判断材料になります。

まとめ

御蔵島は、毎日船が通っているのに、着ける日が6割弱という島です。それは運ではなく、外洋に開いた断崖の島に船を着けられる場所が1か所しかないという構造からきています。東京都が平成6年度から続けている整備事業は、いま2本目の突堤にかかっているところです。旅行者にできることは、それほど多くありません。まず宿を押さえること(これが上陸の条件です)。そのうえで、帰りに予備日を足す・着きやすい5〜9月に寄せる・ヘリは必要なくなったらすぐ返す・乗船券の等級はキャンセル規定も見て選ぶの4つを日程に織り込むこと。この準備をしておけば、数字のうえでは十分に「行けて、帰れる」島です。

参考・出典(公式サイト)

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※ 情報は変更される場合があります。おでかけ前に各公式サイトでご確認ください。(最終確認:2026年9月)

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