新島の写真としてよく目にするのが羽伏浦(はぶしうら)海岸です。白い砂浜がひたすら続き、その向こうに濃い青の海が広がる——写真で見たあの景色を目当てに島へ渡る人は少なくありません。ところが実際に旅程を組もうとすると、「羽伏浦で泳げるのか」「どこから見るのがいいのか」で迷います。
もうひとつ、新島を歩くといたるところで目にするのがコーガ石という白い石です。塀にも、展望台にも、土産物のガラスにも使われている。この石が何者かを知ると、島の風景の見え方が変わります。この記事では新島村・東京都・東海汽船の公式情報をもとに、羽伏浦の楽しみ方と、島をつくった石の話を整理します。島全体の歩き方は新島の歩き方にまとめてあります。
羽伏浦海岸とは — 6.5kmの白砂
新島村の公式サイトは、羽伏浦を見下ろす羽伏展望台の説明のなかで、この海岸をこう紹介しています。「世界的サーフスポットとしても知られ、6.5km真っ白な砂浜の羽伏浦海岸を一望できる」。さらに、晴天時には三宅島・御蔵島まで見渡せること、新東京百景にも選ばれている名勝地であることが記されています。
砂が白いのは偶然ではありません。東京都の観光公式サイトは、羽伏浦海岸の端に広がる白ママ断崖について「この珍しい岩があるため、新島には白い砂浜が広がり」と説明しています。白い砂は、島をつくっている白い岩が砕けたものだということです。実際、村公式は別の海岸(若郷前浜)を「羽伏浦や本村前浜と対照的に黒い砂浜が特徴」(本村前浜=下の表の前浜海岸)と説明しており、同じ火山島でも浜ごとに素材が違うことが分かります。
「泳ぐ浜」と「眺める浜」を分けて考える
ここが旅程づくりのいちばん大事なところです。新島村の公式サイトで羽伏浦が紹介されているのは、「史跡・名勝」のページ(羽伏展望台からの眺め)と「サーフィン」のページです。サーフィンのページでは羽伏浦を「新島の代名詞として世界に誇れるパワーある波がブレイクするポイント」と表現しています。世界的なサーフポイントということは、裏を返せば波の力が強い海だということです。
一方、村公式が「海水浴場」のページで設備とともに案内しているのは、黒根海岸・前浜海岸・間々下海岸・若郷前浜の4か所です。羽伏浦が遊泳禁止というわけではありませんが、シャワーやトイレといった設備の案内は、この4か所に付いていて羽伏浦には付いていません。つまり新島の旅は、羽伏浦は展望台から眺めて砂浜を歩く時間、泳ぐのは設備の案内がある浜——と役割を分けて組むと、現地でちぐはぐになりません。遊泳の可否や監視体制はその年の状況で変わるため、泳ぐ予定があるなら新島村役場産業観光課観光係(04992-5-0284)や村公式の最新情報で確かめてから出発してください。

村公式が案内する4つの海水浴場
| 海岸 | 特徴(新島村公式より) | 近隣施設 |
|---|---|---|
| 黒根海岸 | 船旅を終えて最初に目にする海岸。目の前の桟橋で釣りもできる | 船客待合所にシャワー、トイレ、自動販売機等 |
| 前浜海岸 | 本村地区の中心部から最も近い。海岸が広く波穏やかで子ども連れが多い。夏場には浮島が設置される | トイレ、シャワー |
| 間々下海岸 | 透明度が高くシュノーケリング好きに人気。眼前に式根島・神津島が広がる | 湯の浜露天温泉(シャワー有・水着着用必須)、トイレ |
| 若郷前浜 | 黒い砂浜が特徴。前浜海岸に比べ比較的すいており、波も静か | トイレ、シャワー |
設備が整っていて波も穏やか、という条件で選ぶなら前浜海岸、船を降りてすぐ泳ぎたいなら黒根海岸、海の中を覗きたいなら間々下海岸、混雑を避けたいなら若郷前浜——という住み分けになります。
コーガ石 — 新島とリパリ島にしかない石
新島を歩くと、白くて軽そうな石があちこちに使われていることに気づきます。これがコーガ石です。東京都の公式サイトによると、コーガ石は黒雲母流紋岩(くろうんもりゅうもんがん)で、多孔質の軽石。そして決定的なのが産地で、「イタリアのリパリ島とこの新島でのみ産出される、世界的に見て珍しい石」と説明されています。新島村もガラスアートセンターの案内で「世界でイタリア・リパリ島と新島でしか採れない石材」と記しており、村と都の記述は一致しています。
名前が何度も変わった石
この石の呼び名は、歴史のなかで移り変わってきました。東京都公式の解説によると、江戸時代には「軽石」または「浮石(かぶいし)」、江戸末期に「剛化石」、大正時代には商品名として「抗火石(こうかせき)」で販売され、戦後に「コーガ石」と呼ばれるようになりました。名前が変わるたびに用途が広がっていった、と読むこともできます。
石が島の風景をつくっている
東京都公式によると、コーガ石は鋸や斧で容易に切断でき、軽量性・耐火性・断熱性・耐酸性から多くの用途に使用されてきました。建築の分野では内装材や外装材、断熱材、タイル風呂の保温素材に、原石のままなら造園用や彫刻用にも用いられます。さらに、窯業原料として砕いたものは「新島長石」と呼ばれ、陶磁器・タイル・ニューセラミック・色ガラスの原料にもなります。
島の風景そのものにも使われています。新島村公式は、若郷集落と渡浮根漁港を見下ろす渡浮根展望台を「コーガ石で造られた展望台」と説明しています。眺めるための建物が、その島でしか採れない石でできている——新島らしい話です。
もっとも、使われているどころではありません。東京都公式はコーガ石を「新島の向山から産する」ものとしたうえで、新島を「島の北部の玄武岩の層をのぞけば、ほとんどが黒雲母流紋岩、つまり白っぽいコーガ石でできた島」と説明しています。島そのものが、この石でできているのです。羽伏浦海岸の端に広がる白ママ断崖は、村公式によれば高さ30m〜250mの地層が約7kmにわたってむき出しになった場所。白い島、という印象はここから来ています。なお東京都の観光公式サイトは、白ママ断崖について「波や風雨による浸食も激しく、崩れたり大きな石が落ちることもあり、非常に危険」として、手前から眺めるだけにするよう呼びかけています。
新島ガラスとガラスアートセンター
コーガ石は、新島ならではの工芸品にもなっています。新島村立のガラスアートセンターは、コーガ石を原料にしたガラス製品を制作している施設で、制作体験も可能です。隣接するガラスアートミュージアムには、新島のガラスアート作品に加え、世界のガラスアーティストによる作品も展示されています。
訪ねるときに注意したいのが開館日です。村公式によると、ガラスアートセンターの定休日は毎週火曜日と年末年始、開館時間は午前10時〜午後4時30分(午後0時〜午後1時は昼休憩)。見学は無料で、体験教室は有料です(電話 04992-5-1540)。一方、隣接するガラスアートミュージアムについて村公式の施設案内は「開館日 火曜日」と記しており、開館時間は午前9時〜午後4時30分、見学料は300円です(電話 04992-5-1840)。センターが休む火曜にミュージアムが開くという案内になっているため、どちらを目当てにするかで訪問曜日が変わります。曜日や時間の運用は変わることがあるので、村公式か電話で確かめてから向かうと確実です。
モヤイ像は新島生まれ
渋谷駅前のモヤイ像を知っている人は多いと思いますが、あれは新島から贈られたものです。東京都公式の解説によると、1977年に新島産コーガ石を用いて制作されたモヤイ像が渋谷区へ寄贈されました。モヤイ像は新島に伝わるコーガ石彫刻で、島内にも数多く置かれています。街で見かけていたあの顔が、この島の石でできていた——と分かると、島歩きの楽しみが一段増えます。
行き方と、羽伏浦までの移動
東海汽船の公式ページによると、竹芝から新島までは高速ジェット船で最短2時間20分、大型客船(夜行)で最短8時間30分が目安です。空路は調布飛行場から新中央航空の便があり、片道16,600円・往復割引30,200円(往復割引は4月26日〜5月7日、7月25日〜8月31日、12月25日〜1月7日は適用外)。予約は搭乗日1か月前の同一日 午前10時から、手荷物は機内持込と預け入れの合計で1人5kg以内が無料です。

島に着いてからの移動も押さえておきましょう。東海汽船の公式ページは、新島港から羽伏浦海岸まで徒歩40分、車で10分と案内しています。徒歩40分は、歩けなくはないが夏の日中に往復する距離ではない、というくらいの感覚です。展望台からの眺めと砂浜の両方を見たいなら、車か自転車を確保しておくと動きが軽くなります。
新島 羽伏浦・コーガ石 早見表
| 項目 | 内容(目安) | 出典 |
|---|---|---|
| 羽伏浦海岸 | 6.5kmの真っ白な砂浜。新東京百景の名勝地 | 新島村 |
| 羽伏浦の位置づけ | 「世界的サーフスポット」「パワーある波がブレイクするポイント」 | 新島村 |
| 村公式の海水浴場 | 黒根海岸・前浜海岸・間々下海岸・若郷前浜の4か所 | 新島村 |
| コーガ石 | 黒雲母流紋岩・多孔質の軽石。イタリアのリパリ島と新島でのみ産出 | 東京都 |
| ガラスアートセンター | 午前10時〜午後4時30分(昼休憩あり)/定休日 毎週火曜・年末年始/見学無料 | 新島村 |
| ガラスアートミュージアム | 午前9時〜午後4時30分/村公式の案内は「開館日 火曜日」/見学料300円 | 新島村 |
| モヤイ像 | 1977年に新島産コーガ石で制作され渋谷区へ寄贈 | 東京都 |
| 竹芝→新島 | 高速ジェット船 最短2時間20分/大型客船(夜行)最短8時間30分 | 東海汽船 |
| 調布→新島 | 片道16,600円・往復割引30,200円(適用外期間あり) | 新中央航空 |
| 新島港→羽伏浦海岸 | 徒歩40分/車で10分 | 東海汽船 |
まとめ
羽伏浦海岸は、6.5kmの白砂が続く名勝であり、同時に波の強い世界的なサーフポイントです。だから新島の旅は、「羽伏浦を眺めて歩く時間」と「設備の整った浜で泳ぐ時間」を分けて組むと過不足がありません。羽伏展望台から一望して、砂浜まで下りて歩き、泳ぐのは前浜や黒根へ——これが無理のない一日の形です。
そして、島じゅうで目にする白い石が世界でイタリア・リパリ島と新島にしかないコーガ石だと知っていれば、塀も、展望台も、土産物のガラスも、ぜんぶ同じ物語につながって見えてきます。渋谷で待ち合わせに使っているあのモヤイ像も、この島の石です。
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参考・出典(公式サイト)
- 新島村|観光スポット・史跡・名勝(羽伏展望台/渡浮根展望台/白ママ断崖)
- 新島村|観光スポット・海水浴場
- 新島村|アクティビティ・サーフィン
- 新島村|施設案内・ガラスアートセンター(ガラスアートミュージアムの案内も同じページに掲載)
- 東京都|地域資源紹介(新島のコーガ石)
- 東京都観光公式サイト GO TOKYO|白ママ断崖
- 東海汽船|新島
- 新中央航空|時刻表・運賃
※ 情報は変更される場合があります。おでかけ前に各公式サイトでご確認ください。(最終確認:2026年8月)
