東京の南およそ200km、三宅島の南約19kmの太平洋上に浮かぶ御蔵島(みくらじま)は、お椀を伏せたような姿の急峻な島です。島の大半をスダジイなどの原生林が覆い、断崖と豊かな湧き水がつくる独特の自然が広がります。ここでは、原生林と巨樹、認定ガイドと歩く自然観察、そして上陸のルールとアクセスまで、島全体の歩き方をまとめました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都御蔵島村。東京の南約200km、三宅島の南約19kmの伊豆諸島 |
| 規模 | 面積 約20.5km²/人口 約320人。最高峰・御山(おやま)は標高851m |
| 主な見どころ | スダジイの原生林と巨樹(南郷のオオジイ=幹周約14m)、タンテイロの森、断崖と湧き水、ドルフィンスイム |
| 森の散策 | 原則、東京都認定自然ガイドの同行が必要(2002年制定「御蔵島自然保護条例」)。里から近いタンテイロコースなど一部はセルフガイドで開放 |
| 上陸ルール | 宿(8軒)・村営バンガロー(6棟)の予約が必須。予約がないと上陸できない |
| アクセス | 竹芝桟橋から三宅島を経由する大型客船が1日1往復。ヘリコミューターもあり。時刻・運賃は東海汽船公式で確認 |
| 注意点 | 外洋の島で桟橋が1か所のみ。海況により客船の欠航が起こりやすい |
原生林と巨樹の島
御蔵島の魅力の核心は、島全体を覆う原生林です。東京都は御蔵島を「全国有数の巨樹・巨木の群生地」と紹介しており、常緑広葉樹のスダジイを中心に、樹齢を重ねた大木があちこちで見られます。島でもっとも大きな巨樹は「南郷(なんごう)のオオジイ」と呼ばれるスダジイで、幹の周りはおよそ14mにもなります。
島は火山活動が約6,300年前を最後に確認されておらず、そのあいだに森が育まれてきました。断崖に囲まれた急峻な地形と、他の離島に比べても豊富な水資源(湧き水や沢)が、この深い森を支えています。標高が上がると気温が下がり、標高500m付近から植生が移り変わっていくのも、山を歩く楽しみのひとつです。
森を守る固有の生きものたち
御蔵島は海鳥オオミズナギドリの繁殖地としても知られ、東京都は「世界最大の繁殖地」と紹介しています。飛べないミクラミヤマクワガタや、本土のものと斑紋が異なるミクラクロヒカゲといった、この島ならではの昆虫も暮らしています。こうした生態系を守るために、島では自然の利用に一定のルールが設けられています。
認定ガイドと歩く自然観察
御蔵島の森は、誰でも自由に立ち入れるわけではありません。2002年に制定された「御蔵島自然保護条例」により、多くのコースでは東京都認定自然ガイドの同行が必要です。ガイドは1名につき最大7名まで対応し、利用は日の出から日没まで、コースごとに1日の入山人数の上限も定められています。南郷の巨樹をはじめ、御代ヶ池や長滝山などの見どころは、この認定ガイドとともに訪ねる形になります。
一方で、里の近くから往復30分ほどで歩けるタンテイロの森は、ガイドなしで散策できるコースとして開放されています。短い道のりでも、沢の流れや野鳥の気配、足元の照葉樹の質感など、御蔵島らしい森の空気を気軽に味わえます。ガイドの申し込みや料金、コースの最新の開放状況は、御蔵島観光協会で確認してください。
イルカと出会う海(概要)
御蔵島の近海には、ミナミハンドウイルカが約120頭生息しているとされ、ドルフィンスイムはおおむね3月中旬から11月中旬のシーズンに楽しめます。野生のイルカと同じ海で泳ぐドルフィンスイムは、海況が穏やかな春から秋にかけての人気のアクティビティです。予約方法やルール、船の手配などの詳しい内容は、御蔵島のドルフィンスイムの記事で紹介します。ここでは、御蔵島が「森の島」であると同時に「イルカの島」でもある、とだけ押さえておきましょう。

アクセス
御蔵島へは、竹芝桟橋(東京)から三宅島・八丈島を結ぶ東海汽船の大型客船が基本のルートです。客船は1日1往復で、竹芝を夜に出港し、三宅島を経由して翌朝に御蔵島へ到着します(所要はおおよそ7時間半ほど)。このほか、三宅島などを経由するヘリコミューター(東邦航空・東京愛らんどシャトル)もあり、いずれも事前予約が前提です。最新の時刻表・運賃・運航状況は、東海汽船および各社の公式サイトで必ず確認してください。

ベスト時期・楽しみ方
海が穏やかになりやすい春から秋は、ドルフィンスイムと森歩きの両方を楽しみやすい季節です。イルカ観察の目安は3月中旬から11月中旬ごろ。森は一年を通して表情がありますが、山道は雨や気温の変化を受けやすいため、歩きやすい靴と雨具は季節を問わず用意しておくと安心です。滞在は、認定ガイドと歩く山のコースを1つ、里から気軽に行けるタンテイロの森を1つ、と組み合わせると、御蔵島の自然を無理なく味わえます。
注意点
もっとも大切なのは、上陸には宿泊予約が必須だという点です。御蔵島には宿が10軒と村営バンガローが6棟あるだけで、飛び込みの宿泊を受け入れる余裕がありません。そのため、宿の予約がない方は上陸できません。日帰りでふらりと立ち寄れる島ではないことを、計画の前提にしてください。
もう一つは欠航のリスクです。御蔵島は外洋に位置し、潮流と風の影響を受けやすいうえ、桟橋が1か所しかありません。このため海況によって客船が欠航することがままあり、伊豆諸島のなかでも運航が安定しづらい島です。前後に予備日を設けるなど、日程には十分な余裕を持って計画しましょう。森を歩く際は、ガイドの案内と島のルールに従い、動植物を持ち出さない・傷つけないことを徹底してください。
まとめ
御蔵島は、スダジイの巨樹が茂る原生林、断崖と湧き水の地形、そして近海のイルカという、東京とは思えない自然が凝縮された島です。森歩きは認定ガイドの同行が原則で、上陸には宿泊予約が欠かせません。ルールを守ることが、この島の自然を次の世代へ引き継ぐことにつながります。準備を整え、余裕のある日程で、御蔵島ならではの時間を過ごしてください。
