利島の歩き方|椿とイルカの小さな島

伊豆諸島の大島から南へおよそ25km。周囲約8km、面積4.04平方キロメートルという小さな有人島が、利島(としま)です。島の大半は椿林に覆われ、中央には円錐形の宮塚山がそびえます。周囲の海には野生のイルカが定住し、便利さとは違う「静かな島時間」を求めて旅人が訪れます。

項目 内容
アクセス(東京から) 竹芝客船ターミナルから高速ジェット船・夜行の大型客船。静岡・下田港からは客船フェリーも就航(所要・時刻・運賃は変動、末尾の出典で確認)
島間の空路 ヘリコプター「東京愛らんどシャトル」(東邦航空運航)。大島・御蔵島・三宅島などと接続
主な見どころ 標高508mの宮塚山と展望台/約20万本といわれる椿林/ミナミハンドウイルカのドルフィンスイム・ウォッチング
名産 利島産ヤブツバキの椿油(国内有数の産地)
規模・地形 周囲約8km・面積4.04km²、人口およそ300人。断崖に囲まれ、港も集落もひとつ
特徴 にぎやかな観光地とは対極の、静かな島時間

島の大半が椿林 ― 椿と椿油の島

利島を語るうえで欠かせないのが椿です。島全体が椿林に覆われ、その数は約20万本ともいわれます。冬になると島のあちこちで花が咲き、地面を赤く染める光景は「椿のじゅうたん」とも呼ばれます。

利島の椿の花
島を覆う約20万本ともいわれる椿。冬になると利島のあちこちで咲き、その実からは名産の椿油がしぼられる

この椿の実からしぼる椿油は、島を代表する名産品です。原料は日本の固有種であるヤブツバキの種で、利島の椿油は生産量が全国でも有数で、これまで何度も日本一になってきました。実の採取からしぼり、充填まですべて島内で行われ、農薬・化学肥料を使わずに育てた実を用いるのが特徴です。300年ともいわれる歴史のなかで受け継がれてきた、島の暮らしそのものといえる産業です。

利島の集落と海
坂の上に家々が寄り添う利島の集落。港も集落もひとつだけ、断崖に囲まれた静かな島の暮らしが続く

島の頂・宮塚山

島の中央にそびえるのが、標高508mの宮塚山です。海から見るとほぼ円錐形をした美しい姿で、利島独特の景観をつくっています。展望台までは南登山口・東登山口から登山道が整備され、道中では椿やサクユリ、メジロやオオミズナギドリといった動植物に出会えます。

空気が澄んだ日には、展望台から伊豆半島や、その向こうの富士山まで見渡せます。小さな島ながら登りごたえのある山歩きが楽しめるのも、利島の魅力のひとつです。

利島の玄関口と円錐形の宮塚山
港に立つ「ようこそ利島へ」の看板と、円錐形の宮塚山(標高508m)。海から見上げるその姿が島の象徴になっている

野生のイルカと泳ぐ ― ドルフィンスイム

利島のもうひとつの主役が、島の周辺に定住する野生のイルカです。ここに棲みついているのはミナミハンドウイルカで、現在は約20頭前後が確認されています。好奇心が強く、機嫌がよいときはイルカのほうから近づいてくることもあるといいます。

島では、イルカと一緒に泳ぐドルフィンスイムや、船上から観察するドルフィンウォッチング、スクーバダイビングを楽しめます。体験の際は「イルカに触れない」など、野生動物と海を守るためのルールが定められています。催行の内容や海況の条件は事業者ごとに異なるため、申し込み時に各事業所へ確認しましょう。

島へのアクセス

海路 ― 竹芝・下田から船で

東京からの玄関口は竹芝客船ターミナルです。日中に運航する高速ジェット船と、夜に出て翌朝に着く大型客船(夜行)があり、旅程に合わせて選べます。静岡側の下田港からは客船フェリーも就航しています。所要時間や時刻、運賃は季節や便によって変わるため、計画の際は各社の公式情報で最新をご確認ください。

空路 ― 島をつなぐヘリコプター

利島には、伊豆諸島の島々を結ぶヘリコプター「東京愛らんどシャトル」も乗り入れています。東邦航空が運航し、青ヶ島・八丈島・御蔵島・三宅島・大島・利島の6島を結ぶ1日1往復の便です。定員が限られているため、利用には早めの予約と、最新の運航情報の確認が欠かせません。

ベストシーズンと楽しみ方

椿の花を目当てにするなら、見頃を迎える冬から早春が狙い目です。島のあちこちで花が咲き、地面を染める光景が広がります。一方、野生のイルカと泳ぐドルフィンスイムは海が穏やかな時期に楽しみやすく、催行の期間は事業者ごとに設定されています。宮塚山から望む富士山は、空気の澄んだ日ほどくっきりと見えます。目的によって最適な季節が変わるのも、利島ならではの楽しみ方です。

知っておきたい注意点 ― 港と就航

利島でいちばん心得ておきたいのが、船の就航です。島は砂浜がなく断崖に囲まれ、船を着けられる港はひとつだけ。海の状況はわずか10分ほどでも変わるとされ、天候や波の条件によっては、いったん出航しても着岸できずに引き返す「条件付き」の運航や、欠航になることがあります。そのため、確実な予定が立てにくい島だと、あらかじめ理解しておきましょう。

対策としては、日程に予備日をもたせること、往復とも同じ手段に頼りきらないこと、そして出発直前まで運航状況をこまめに確認することが大切です。宿や体験の予約時に、欠航となった場合の対応もあわせて相談しておくと安心です。

まとめ

椿の森と野生のイルカ、そして円錐形の宮塚山。利島は、派手な観光施設こそないものの、自然とゆっくり向き合える静かな島です。船が着きにくいという不便さも、この島の時間の流れをつくる一部といえるかもしれません。日程にゆとりをもって、島時間を味わいに出かけてみてください。

参考・出典

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